沈む朝、昇る夜。
第1話 拝啓、僕たちは
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投稿日: 2026.06.20

作品内容

教科書には載らないあの子達のこと、授業では教えてくれない不完全な愛の話。

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作品内のセリフ

1ページ目

  • だからね凪(なぎ)ちゃん
  • もう我慢、しなくていいからね。

2ページ目

  • なんで?
  • 沈む朝、 昇る夜。
  • 一限目
  • 「拝啓、僕たちは」

3ページ目

  • うーん
  • そうだなー…
  • 凪ちゃんがもう、「お兄ちゃん」じゃないから…
  • かな?

4ページ目

  • よくわかんないや
  • いるかもあいはもおれの弟だもん!

5ページ目

  • あのね
  • 相葉ちゃんは今あんまり関係無いんだけどね
  • 凪(なぎ)ちゃんと、
  • いるかちゃん
  • 二人が居るでしょ?
  • 二人はね、本当は
  • 「逆」なの。
  • だから、実際はいるかちゃんがお兄ちゃんで、凪(なぎ)ちゃんが弟。

6ページ目

  • なんとなーく、分かったかな?
  • この頃の幼い脳みそでは本当になんとなくしか理解は出来なかったが、要は単なる「入れ違い」
  • 双子を取り違えるなんてよくある話で、それは三つ子だって例外じゃない。
  • おおよそ原因はお風呂上がりに見分けが付かなくなっただとかそんなくそしょうもない出来事。
  • そんな笑い話にでもなるような思い出がこの先どんな影響を与えるかなんてこの場の誰にも知る由はない。

7ページ目

  • この日の丁度一年前、

8ページ目

  • 弟を庇って車に轢かれた事があった。

9ページ目

  • おにいちゃん?

10ページ目

  • 命に別状はないものの、右目と右耳に軽い障害が残った
  • 泣いたのは俺じゃなくているかの方だった。

11ページ目

  • おもちゃ
  • ゲーム
  • ぬいぐるみ
  • 新しい服
  • 三時のおやつに
  • お気に入りのマグカップ
  • 昔から、あげられるものならなんだって弟にあげていた。
  • それが俺にとっての一番の幸せだったから。
  • だから惜しい物なんて何一つ無かった。もし俺が死んで、それで弟が助かるならそれでもよかった。

12ページ目

  • それがよくなかった。
  • 夕飯前にお腹が空くのも、
  • 右目を開くと花火が散るのも、
  • サイズの合わないこの服たちも。
  • 俺にとっては全部、どうでもいい事だったけど

13ページ目

  • 母はいつも優しかった、母はいつも正しかった故に残酷だった。
  • そんな「どうでもいいこと」を、母が今になって丁寧に説明するのは、紛れもなく俺のせいだった。
  • 正しさは人を殺すのだと、いつか父は言っていた。
  • この世に正解なんてないと言った父は、それから五度目の年明けを境に二度と戻ることは無かった。
  • 俺にとっての正義は、大人の目には単なる自己犠牲の類いに映る事を知った。
  • それでも
  • 正しくなくても
  • 君の憧れは俺がいいから

14ページ目

  • おにいちゃんっ!!
  • やだっ
  • おにいちゃん、おにいちゃんじゃなくなるの…?
  • なんで?やだよ…
  • どこにも行っちゃやだぁ…
  • どこにも行かないよ
  • おれはお前の兄ちゃんだもん!
  • 大丈夫

15ページ目

  • 気がつけば少しだけ気まずそうなもう一人の手首を強引に引いて
  • そのまま裸足で玄関を飛び出していた
  • 難しい話は嫌い
  • つまらないことはもっと嫌い!

16ページ目

  • 母さんのこと、特別嫌いなわけじゃないけど
  • 大人はみんな面倒くさいから好きじゃない
  • きっと母さんは追いかけて来ない
  • 父さんが昔、母さんは酷い人だと言っていたから
  • 冬の終わりのコンクリートは、裸足ではまだ冷たかったけど
  • 三人ぼっちの公園は…… いつか絵本で見た ネバーランドによく似ていて
  • 溶け切らない雪たちが 月のひかりに照らされて、 夢みたいにきらめいて 妖精みたいに瞬いて、 それが心地よくて。

17ページ目

  • …ねむい?
  • おまえあったかいなあ
  • すわろっか
  • 母さん、迎え来るのかな怒ってると思う?
  • パパは怒りそう…
  • 母さんはいつも怒らないもんね
  • あ…
  • しー…
  • いるかも眠かったら寝てていいよ
  • うん…

18ページ目

  • ?
  • ひゃっ
  • つめた…っ
  • さむー
  • ん…
  • わ…
  • おにーちゃんっ
  • おきてっ
  • ん~~~~
  • なに…

20ページ目

  • 結局そのあと迎えは来なくて、一晩中捕って風邪を引いた。
  • 俺は母さんに強く叱られたけれど、そのおかげで全部が曖昧になった
  • あの夜降った最後の雪が積もって、春の訪れと共に俺たちの秘密ごときっと全部かき消してくれた
  • きみの涙と共に流れた流星群は、隠れた右目の暗闇の中ですいつまでも輝き続けていた